まんが日本昔ばなし全1474話の中から怖い話をまとめてみました。
心霊・妖怪・鬼が出てくる怪談話以外にも、人間、動物、天災にかかわる怖い話など、“インパクトのある怖い話”から“ジワジワ来る怖い話”まで様々な話をピックアップしました。
各話には「カテゴリー」の他に、関連性のある「関連ワード」を設定しています。
また恐怖度を示す「恐怖レベル」、怪奇度を示す「怪奇レベル」を設定し、それらをの数値を元にランキング付けしています。
「まんが日本昔ばなし」について
1976年1月(昭和51年) 〜 1994年9月(平成6年)に全国ネットで放送されたテレビアニメ。全国各地に伝わる昔からの言い伝えや、童話などを元に作られた作品も多く現在でも幅広い年齢層で親まれている。
各話のデータの見方は以下になります。
話の舞台:(舞台となった地域名)
作 画:(作画担当者名)
声 優:(ナレーションの担当者名)
関連ワード:(各話に関連するワード)
恐怖レベル:(恐怖度を10段階評価)
怪奇レベル:(怪奇度を10段階評価)
恐怖+怪奇:(総評価)
(各話のあらすじ → 感想の順にまとめています)
佐吉舟
放送時期:1980年08月09日
話の舞台:東京 (八丈島)
作 画:須田裕美子
声 優:常田富士男
カテゴリー | 幽霊 |
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関連ワード | 海、船、殺人、怨念、復讐 |
恐怖レベル | ★★★★★★★★★★ |
怪奇レベル | ★★★★★★★★★☆ |
恐怖+怪奇 | 19 |
[あらすじ・感想]
昔、八丈島での話、太兵衛と佐吉という二人の仲の良い漁師がいました。
佐吉は島では一番の男前で、太兵衛は島では一番の腕自慢でした。島の娘達は二人の所に行きたがりました。ところが二人とも船主の娘、ヨネが好きになってしまいました。
ヨネも二人の事が好きでしたが同時に嫁にいけない、そこで船主は稼ぎの多い方を嫁に行って欲しいと条件を出しました。それからというものの、あんなに仲の良かった二人の漁師は敵同士の様になってしまいました。
ある波の静かな日の事、その日はどういう訳か佐吉の方に魚がどんどん食いつきました。
佐吉の船底は釣った魚でみるみる溢れていきました。
その辺りで切り上げたら良かったものの太兵衛と差を付けたい佐吉は魚を捕り続けました。
すると佐吉の船が魚の重みで沈んでしまいました。
「佐吉、船に乗せてやる代わりにヨネをワシに譲ってくれるか?」
助けを求める佐吉に、太兵衛はそう言い放ちますがが断られてしまいます。すると太兵衛は船にしがみ付く佐吉を櫂(かい)で殴り続けました。
血まみれで海に沈んでいった佐吉を見た太兵衛は自分がやってしまった事に怯えだします。
その日の夜、消息を絶った佐吉を探そうとする島の住民達をよそに太兵衛は家に閉じこもり続けました。
それから何日か経ったある日の事、太兵衛は漁に出ていきました。怪しい天気でしたが不思議と魚が獲れました。太兵衛は夢中になって魚を釣っていると、遠くから船を漕ぐ音がしてきました。
少しづつ近づいてくる船。よく見ると、そこには死んだはずの佐吉の姿が。
「柄杓を貸してくれ」
そう言い続ける佐吉に怯えながらも何故かひしゃくを渡してしまう太兵衛。
すると佐吉の霊は柄杓で海水を掬って太兵衛の船の中へ、船はやがて海水の重みで沈んでしまいました。
海原に浮かんだ太兵衛が佐吉の船にしがみ付こうとすると・・・。
ただただシンプルに恐ろしい話だった。助けを求めたのにも関わらず殴り殺された佐吉の怨霊が太兵衛に復讐。しかも自分が死んだ時と同じ目に遭わせてやろうという佐吉の怨念が見える。自分の欲の為に仲間を殺す生きている人間(太兵衛)のリアルな怖さと、死んで行った者の怨念(佐吉)が作り出す霊的な怖さが共存した作品。最後は登場人物の誰もが救われない、ただただ恐怖だけが残ってしまう話です。
おいてけ堀
放送時期:1991年06月01日
話の舞台:東京
作 画:前田こうせい
声 優:市原悦子
カテゴリー | 幽霊 |
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関連ワード | 女、狐のお面、幼馴染、夫婦 |
恐怖レベル | ★★★★★★★★☆☆ |
怪奇レベル | ★★★★★★★★★★ |
恐怖+怪奇 | 18 |
[あらすじ・感想]
昔、博打を覚えて以来全く仕事をしなかった町のある魚屋の男がいました。
見かねた嫁と幼馴染の金さんも説得したが聞き入れようとしませんでした。
そこで金さんは ”おいてけ堀で魚を釣ったら1両で買い取る。もし途中で怖くなって逃げ帰ったら1年おいらの手伝いをしてもらう”と提案しました。
この町にはおいてけ掘というお堀があって、魚を釣ると”おいてけ、おいてけ”と不気味な声が聞こえてくるという噂があり誰一人おいてけ堀で魚釣りをする者はいませんでした。
その日の夜、おいてけ堀で釣りをしてしばらくした頃でした。突如「おいてけ、おいてけ」と掘から不気味な声がしたため男は慌てて逃げました。
すると前から狐のお面を被った着物姿の女が現れ、「その魚、私に売ってくださる?」そういって女はお面を外しました。魚をどうしても持ち帰るという男。
「ホッホッホッホッ。これでもかい?」
すると女はまたお面を外し今度はのっぺらぼうになってしまいました。それを見た男は慌てて町の中へ逃げていきました。
道中、男は屋台の蕎麦屋に助けを求めましたが、店主の親父もまたのっぺらぼうになっていました。男は怖気付いて、釣った魚を置き家まで逃げて帰っていきました。
直後、狐のお面を被った女が蕎麦屋の屋台に現れ、魚を持ち去っていきました。
なんとか家まで逃げ帰った男でしたが、嫁までのっぺらぼうになっている姿を見てついに気絶してしまいました。
一方その頃、金さんは蕎麦屋で酒を飲んでいました。
金さんは一向に働かない幼馴染に改心してもらうため、男の嫁と蕎麦屋の親父と共に一芝居打っていたのでした。
「しかし金さん、あんたも手の込んだ芝居考えたもんだね。あんな綺麗な娘さんまで使うとは」
その話を聞いて何の事かさっぱり分からない金さん。
「あの狐の面を付けた娘さんだよ、金さんが頼んだんじゃないのかい?あの娘さん。」
金さん曰く、嫁さんと親父さんにはのっぺらぼうになってもらったけど・・・。
1976年に放送された「おいてけ堀」のリメイク版。初期の作品は内容こそ怖いが少々おちゃらけた演出があった。今回のリメイク版は、そのおちゃらけた演出が無くなり、ストーリーも少し捻りが入れられている。働かない幼馴染に嫁と手を組んで芝居を打ったのは良かったのだが、最後は雲行きの怪しい感じになった。おいてけ堀には何故釣った魚を置いていかなければいけないのか、あの狐の面を被った女とどう関係があるのか色々と謎が多い。序盤からじわじわきて、最後で一気に怖さがくるような仕掛けがあった作品でもある。
十六人谷
放送時期:1983年12月03日
話の舞台:富山
作 画:加藤鏡子
声 優:市原悦子
カテゴリー | 幽霊 |
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関連ワード | 女、爺さん、村の衆、木こり、柳の木、呪い |
恐怖レベル | ★★★★★★★★★☆ |
怪奇レベル | ★★★★★★★★☆☆ |
恐怖+怪奇 | 17 |
[あらすじ・感想]
昔、飛騨の山中の事、木こりの弥助が家に帰ると見知らぬ女がいました。
15人の村の衆と山の谷で木を切るという噂を耳にした女は「明日、谷にある柳を切らないでください」そういって女は立ち去っていきました。
次の日、弥助は15人の仲間と北又谷に入りました。
そこには昨夜の女がおり、お辞儀をした後、またすぐに消えてしまいました。
樹齢数百年の立派な柳の木を村の若い衆は斧で切り始めました。弥助は木を切るのを止めるよう必死に説得をしましたが柳の木は切り取られてしまいました。
その日の夜、小屋に戻り飯を済ますと弥助と若い衆は急に眠気に襲われました。
すると小屋の中にあの女が入ってきました。
弥助が目を覚ますと、弥助以外の15人の若い衆が下を切られて死んでいました。
「頼めばこんな事にならずに済むと思ってたのに」そういって女は弥助の目の前まで来ましたが、弥助は恐ろしくなって山刀で女を切りつけ小屋から逃げ出しました。
それから50年、爺さんになった弥助はこの話を目の前のいろり端で座っている女に聞かせていました。
しばらくした頃、家族が飯を持って弥助のいる小屋の戸を開けると・・・。
時を経て柳の木を切られて事への怨念が悲劇をもたらした恐ろしい話。他の村の衆では無くなぜ弥助の元へ女が頼んで来たのかが真実はよく分からないが、女が「あなたは心の優しいお方」と言っているので弥助であれば止めてくれると思ったのだろう。弥助の方も止める様に説得したのに・・・この様な結末になったのは可哀想な感じがした。この作品は作画とBGMと適度な無音が話の怖さをより演出していると思った。
牛鬼淵
放送時期:1978年03月11日
話の舞台:三重
作 画:矢沢則夫
声 優:常田富士男
カテゴリー | 鬼 |
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関連ワード | 山、木こり、ノコギリ |
恐怖レベル | ★★★★★★★★★☆ |
怪奇レベル | ★★★★★★★☆☆☆ |
恐怖+怪奇 | 16 |
[あらすじ・感想]
昔、伊勢の山奥に牛鬼淵という深い淵があり、そこには体が牛で体が鬼の牛鬼という恐ろしい者が住んでいました。
ある日のこと、伊勢の山奥に二人の木こりが入り山に小屋掛けして木を切っていました。
そうして何日か経ったある夜の事、小屋の中で若い木こりはうつらうつら、年寄りの木こりは仕事道具であるノコギリの手入れをしていました。すると戸口の向こうから男が中を覗いていました。
「何しとるんじゃ」
ノコギリの手入れをしているという年寄りに対し、
「ほほう、ではそのノコギリは木を引くんじゃな?」
男に対し年寄りは「そうともよ。じゃがなこの32枚目の刃である鬼刃はな鬼が出て来た時にこれで轢き殺すんじゃよ」それを聞くなりと男が闇の中に姿を消して行きました。
“まさか牛鬼では” と警戒する年寄りに対し若い方は嘲笑っていました。
次の日、二人は山の中で一生懸命働いました。その日の夜、昨夜と同じ様に年寄りの方はノコギリの手入れをしていました。
するとまたあの男が戸口の奥から覗いていました。
「何しとるんじゃ」
ノコギリの手入れをしているという年寄りに対し、「そのノコギリは木を引くんじゃな?」
男は昨夜と同じ事を聞いてきました。
年寄りは言いました。「そうじゃとも。じゃがなこの32枚目の刃は鬼刃といって鬼が出て来たら引き殺すのよ」それを聞くなり男はまた闇の中に去って行くのでした。
次の日も朝早くから山に入り仕事をしていましたが大木を目の前にして苦戦すると若い方が鬼刃を折ってしまったのです。
その後、年寄りの木こりは村へノコギリを直しに山を降りて行きました。
不吉な思いをした年寄りが若い方に一緒に山を降りないか?と誘いましたが断られてしまいました。若い方は一人山小屋で過ごす事になりました。
その日の晩の事でした。また例の男が戸口を覗いて、
「何しとるんじゃ、今夜は一人じゃな」
“その、ノコギリの鬼刃が欠けてしもうてな”と若い方が言うと、
「すると今夜は鬼刃はないんじゃな?鬼を引き殺す鬼刃はないんじゃな?」
そう言って男は牛鬼の姿に化けたのでした。
恐怖に怯えた若い方は小屋から慌てて逃げ出すも追ってくる牛鬼に川まで追い詰められてしまい・・・。
その土地に昔から伝わる山の恐ろしさを無視した者が遭遇した悲劇の結末。先人の忠告真面目に聞いていれば・・・とは思うがあまりに可哀想な気もする。この結末を知った時の年寄りも相当悔やんでいる様子だったし。あと小屋に男が覗く時のBGMが不気味さをより一層際立たせている感じがした。
百物語
放送時期:1983年09月24日
話の舞台:長野
作 画:江口摩吏介
声 優:市原悦子
カテゴリー | 幽霊 |
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関連ワード | 山寺、女、呪い、祟り、深夜 |
恐怖レベル | ★★★★★★★★☆☆ |
怪奇レベル | ★★★★★★★★☆☆ |
恐怖+怪奇 | 16 |
[あらすじ・感想]
昔、ある村に庄屋の息子、刀屋の息子、山寺の小坊主がいて毎日、昼間から酒を飲んで話に明け暮れていました。
三人は何か面白い事がないか相談していた所、小坊主が村の臆病者を集めて百物語をする事を提案しました。
百物語というのは深夜に百本のロウソクを並べて怪談を語り、一つづつロウソクの火を消していく遊びで、話が進むに連れて部屋の灯が消えていく度胸試しです。そして百本目のロウソクが消えると化け物が現れるという言い伝えがありました。
三人は早速村の若者達を深夜山寺の本堂に集め百物語が始められました。
百物語が進むにつれて部屋の灯りも少なくなっていき、小坊主の話も段々怖くなっていきました。
「出たー!!あそこあそこ!!本当に出た!!!」
99本目のロウソクが消えたところで小坊主が叫ぶと化け物の格好をした庄屋の息子と刀屋の息子が脅かして若者達は山寺の本堂から一目散に逃げ出してしまいました。
本堂には残り1本のロウソクと3人だけが残りました。
三人はロウソクの灯りを頼りにまた酒を飲みはじめました。
その時、生臭い風が吹いて最後のロウソクが消えてしまいました。
一瞬何が起こったのか分からなかった三人でしたが、徐々に不気味さを感じ始めた頃、本堂
の入り口の方を見ると女の霊が立ってました。
気絶した二人を置いて、庄屋の息子だけが無事に山寺をかけ降りていきました。
寺の小坊主は気が触れて生まれた里へ連れ戻され、刀屋の息子は半病人になって寝込んでしまい、庄屋の息子だけが難を逃れました。
庄屋の息子も今度ばかりは恐ろしくなり、毎日神社に通ってお参りをしていました。
そんなある日、神社の鳥居に若い一人の娘がいました。娘は隣の村の者で、遠くに売られて行くところを逃げてきたというのでした。
娘を見て下心が芽生えた庄屋の息子は娘を神社の境内へ誘いロウソクだけの薄暗い本堂へ入っていきました。
娘「お父ちゃんもお母ちゃんも辛いんです。」
庄屋の息子「私がお前の面倒を見てあげるから。」
娘「ほんとですか?ずっとずっといつまでもですか?」
庄屋の息子「もちろん。ずっとずっとですよ。」
娘「ほんとですか。こんな私でも。」
そして生臭い風がまた吹き、ロウソクが消えると・・・。
村人にイタズラを繰り返した末に罰が下った三人の若者の話。夜中の寺といい女の幽霊の登場の仕方といいより怖さを感じさせる演出がよかった。最後の娘からは一人だけ逃れた庄屋の息子を絶対に逃がさない執念、怨念みたいなものを感じた。イタズラはいけないが、三人の被った代償があまりにも大きかった話である。
古寺の化けもの
放送時期:1993年08月28日
話の舞台:山形
作 画:久保田彰三
声 優:市原悦子
カテゴリー | 妖怪 |
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関連ワード | 蜘蛛、親子、呪い、寺 |
恐怖レベル | ★★★★★★★★☆☆ |
怪奇レベル | ★★★★★★★☆☆☆ |
恐怖+怪奇 | 15 |
[あらすじ・感想]
昔、山形のある小さな村に古い寺がありましたが、この寺には和尚さんがいませんでした。
旅の坊さんが来て泊まっても、誰一人生きて帰って来る者はいなかったのです。
ある日の夕暮れ時、また旅の坊さんがやって来ました。坊さんは村人の心配をよそに山寺に出かけていきました。
寺に入ると渡り廊下渡って庫裡で泊まる事にしました。
夜も更け囲炉裏でくつろいでいると、子供を抱いた女が坊さんの側で座っていました。女がでんでん太鼓を鳴らすと、子供は奇妙な動きで坊さんの周りを彷徨きました。
音が止むと親子は渡り廊下を渡って去って行きました。廊下の方を見ると親子の姿はありませんでした。
坊さんは親子の事が気になって眠れませんでした。
しばらくすると体が後ろに引きずられて行きました。よく見ると坊さんの身体中に糸が巻きつけられており、大きな声が本堂の床下から聞こえているのでした。
床下ではあの女が大勢の子供を従えて糸を引っ張っていたのです。
坊さんは持っていた仏像を投げると途中で糸が切れて間一髪の所で危機を免れました。それ以降、床下から声がピタリと止んでしまいました。
翌日、坊さんが床下を開けると人骨と蜘蛛の親子が・・・。
何より、床下の多数の人骨が恐ろしい。化け蜘蛛によって命を奪われた坊さん達のものだろう。化け物蜘蛛の見た目は幽霊の様な怖さが無いものの、非常に奇妙な形態をしており不気味さが漂っていた。荒れ果てた古寺という設定が良く、ボロボロの土壁、鈴虫の鳴き声と音が響き渡る廊下という演出が怖さを際立たせている。開始当初で視聴者を不安にさせるBGMの選択といい、まんが日本昔ばなしに相応しい怪談系の作品だと思った。
亡者道
放送時期:1984年08月04日
話の舞台:岐阜
作 画:加藤鏡子
声 優:市原悦子
カテゴリー | 幽霊 |
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関連ワード | 山岳、呪い、祟り、男、霊魂 |
恐怖レベル | ★★★★★★★☆☆☆ |
怪奇レベル | ★★★★★★★☆☆☆ |
恐怖+怪奇 | 14 |
[あらすじ・感想]
昔、飛騨での事、乗鞍岳(のりくらだけ)という険しい山々がありました。
その西の麓に千町ヶ原という高原があり、そこには清霊田と呼ばれる小池ほどの沼がいくつもありました。千町ヶ原の麓に青屋という在所があり平十郎という猟が好きな百姓が住んでいました。
ある日、乗鞍の麓の桜ヶ丘という亡者道で霞網で鶫(つぐみ)をとっていました。
亡者道とは死んだ人の霊が御嶽に向かって登っていく道です。平十郎は “亡者道を通った者は得体の知れない叫び声を聞いて逃げ帰っていく” という爺さんの忠告は気にも止めずにいました。
猟をしていると平十郎の片目が鶫に突かれて負傷してしまいました。
その日の晩、在所の中で爺さんの忠告を思い出しますが、”夢でも見たのだろう”と楽観した様子でした。
すると突然、家の中に無数の鶫が侵入し、平十郎に襲いかかりました。
平十郎は在所を飛び出し難を逃れたと思いきや、無数の火の玉の形をした霊魂が亡者道を彷徨っていました。そこには自分が仕掛けた霞網で行く手を阻まれた火の玉が呻く様な声を上げていました。
これには驚きを隠せない平十郎でした。次の瞬間、無数の骸骨が襲いかかりました。
逃げる途中で平十郎は足を滑らせ清霊田に転げ落ちてしまいました。そこで平十郎は昔爺さんが片目を失った事、亡者道で猟をしてはいけないと忠告を受けた事を思い出していました。
すると今度は沼の中から骸骨が浮かび上がってきて”平十郎、3日前に仏様の供物食っとる、とらえる事できん”と嘆きました。
気が触れそうになる中、爺さんの元へたどり着いた平十郎が見たものとは・・・。
亡者の通る道には真っ白な御嶽山が聳えている、次々とここを通ってくる亡者達を迎え入るために・・・。
亡者道を遮った男に訪れた悲劇の結末を描いた作品。爺さんの忠告が気になりつつも、夢でも見ているだろうと自分に言い聞かせ猟を止めなかった平十郎。先人の忠告を聞かずに先走った末に祟りにあってしまう日本昔ばなしのあるある話でした。それにしても日本昔ばなしは亡き者や御霊を粗末に扱う話は大概、悲劇の結末を辿りますね。
船幽霊
放送時期:1976年08月14日
話の舞台:岡山
作 画:スタジオアロー
声 優:常田富士男
カテゴリー | 幽霊 |
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関連ワード | 海、船、漁師、祟り、切ない |
恐怖レベル | ★★★★★★☆☆☆☆ |
怪奇レベル | ★★★★★★★☆☆☆ |
恐怖+怪奇 | 13 |
[あらすじ・感想]
昔、ある漁師町の事です、お盆には昔から死んだ人の霊を迎えるため家の前で火を炊きますが、海辺のこの村では浜へ出て火を焚いていました。
落ち着かない若者が火を焚いている老人の後ろを通り過ぎようとすると「若い衆、お盆の夜に船を出すと船幽霊に襲われる」と老人が言いました。
お盆の日には漁で死んだ人の霊が ”船幽霊” となって現れ沖を行く船を沈めてしまうのです。そのため村人たちはお盆の日だけは漁をしませんでした。
老人の忠告虚しく、若い漁師たちは村人の冷たい視線をよそに漁に出かけていきました。
そして漁師達はとうとう沖で漁を始めてしまいました。しばらくするとドス黒い雲が上空を多い不穏な空気が漂ってきました。異変に気付きながらも漁師達は漁を止めませんでした。
すると一隻の古ぼけた大きな船が漁師達の船に近づいてきました。船に万灯が付いたと思いきや無数の霊魂が漁師達の船を襲ってきました。
「ひしゃくをくれ・・・」霊魂の叫び声が聞こえてきました。
すると浜辺で村人達が炊いていた無数の火が上空に登り漁師達の乗っている船の側へやってくると船幽霊達に話し掛けました。
「海の亡者ども静まれ・・・海で働き死んでいった幽霊じゃぞ・・・同じ仲間じゃないか悪さをするな・・・」
すると船幽霊達は消えていきました。
ところで沖に出かけて行った漁師達はその後・・・。
昔から村に伝わるお盆の怪談話。始まりから既に怖い雰囲気を醸し出している。村人の忠告を無視した漁師に祟りが降りかかる話だが、最後はなんとも言えない結末。目先の利益に走ってしまった漁師とはいえ、この手の話はやはり良い結末にはならないのか・・・。
みちびき地蔵
放送時期:1977年10月29日
話の舞台:宮城
作 画:シンエイ動画
声 優:常田富士男
カテゴリー | 天災 |
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関連ワード | 親子、津波、地蔵、亡者 |
恐怖レベル | ★★★★★★★☆☆☆ |
怪奇レベル | ★★★★★★☆☆☆☆ |
恐怖+怪奇 | 13 |
[あらすじ・感想]
昔、宮城県の気仙沼大島の話、浜吉親子は外浜で一仕事を終え浜道を歩いていた時の事でした。
お地蔵さんのある辺りに来ると母親は何やら人の気配を感じていました。お地蔵さんは ”みちびき地蔵” と呼ばれ明日亡くなる人が天国に導いてもらうためお地蔵さんに挨拶に来ると言われていました。
すると村で一番のお年寄りで体の具合が悪いというお婆さんがお参りに来ていました。それを見た母親はとうとう亡くなってしまうのかと思いました。
ところがその後ろ、また後ろと亡者が何人も並んで立っていてお地蔵さんにお参りしては空に昇って行きました。
母親は息子の浜吉を連れて急いで家まで逃げ帰りました。母親はその事を夫に話しましたが、狐に化かされたのだろうと信じてもらえませんでした。
翌日、その日はお節句で海の潮が一番引く大潮の日だったので浜辺は親子連れで賑わっていました。
浜吉があんまり行きたいというので母親は昨夜の事もあり気が進まなかったのですが、その日は海藻がよく採れました。こんなに潮が遠くまで引くなんて何十年もなかった事と年寄りが話し合っていました。潮が差して来る時間なのに全く潮が差して来ませんでした。
すると地鳴り上げて山の様に高い津波が襲って来ました。
急いで浜辺から逃げる村人、浜吉親子も裏にある丘へ逃げて行きました。村も人も一瞬のうちに波に飲み込まれて消えていきました。
浜吉親子はその様子をみながらしばらくは何もできませんでした。
この時、母親は思いました。昨夜の事はやっぱり・・・。
みちびき地蔵は古くから気仙沼大島に実在していたらしく、死者を導くという伝承もあったらしい。東日本大震災の時にその地蔵が流されたが、みちびき地蔵は再建されたという。
地蔵と昔から伝わっている伝承、そして津波のくだりといい、様々な共通点を考えると色んな意味で恐ろしい話だなと思った。開始直後のBGMといい作画も独特で怖さをより際立たせていた。
亡者の通る道
放送時期:1980年08月02日
話の舞台:岐阜
作 画:小林治
声 優:市原悦子
カテゴリー | 幽霊 |
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関連ワード | 雪山、大罪人、親子 |
恐怖レベル | ★★★★★★☆☆☆☆ |
怪奇レベル | ★★★★★★☆☆☆☆ |
恐怖+怪奇 | 12 |
[あらすじ・感想]
昔、飛騨の雪山の事、ある男が倒れている所を近所の百姓である金衛門が見つけました。
男は何人ものの人を殺した大罪人で江戸から逃げて来た所で力尽きたという。金衛門は男に水を飲ませましたがお礼を言ったあと、すぐさま息を引き取ってしまいました。金衛門は男の遺体を近くに埋めて弔ってやりました。
季節が過ぎ、蒸し暑いある晩の事でした。
家の前から人が通る音がしたので金衛門は外の様子を見ましたが誰もいませんでした。
やがて人が通る音や荷車の音も消えていきました。
そして次の日の晩も荷車や人の通る音が聞こえました。今度は家の戸や壁に穴が空けられ荒らされていきました。その夜から金衛門の女房は寝込んでしまいました。
外を見ると音だけが峠の方へ向かっていきました。
すると ”金衛門さん” とどこからとなく声がしました。なんと雪山で死んだ男が霊となって現れたのです。
“うちの中をよく見てみなされ” と男が言うので見てもみると、多くの幽霊が家の中を彷徨っているのでした。
家の外をよく見てみると多くの霊が金衛門の家をすり抜けて行列を作っていました。
男の霊曰く、この霊道は隣村を抜けて越中館山まで続いているという。
越中館山には地獄があり亡者達はそこへ落ちて行くというのでした。そして男の霊も今からその地獄に行くというのでした。
それを聞いた金衛門が再び外から家をじっくりと見てみると・・・。
外では火の玉だけが彷徨いている描写もあったのだが、それよりも見えない幽霊が家を荒らす霊現象の描写が恐ろしい。大罪人の男が霊となって現れた時の雰囲気から何か悪さをするのかと思ったけどそうでは無かった。むしろ金衛門に恩を感じており色々と忠告をしていた。金衛門親子はすぐにでも家を出ていったという。
仏島
放送時期:1987年11月28日
話の舞台:愛知
作 画:白梅進
声 優:常田富士男
カテゴリー | 幽霊 |
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関連ワード | 島、石塔、漁師 |
恐怖レベル | ★★★★★☆☆☆☆☆ |
怪奇レベル | ★★★★★★☆☆☆☆ |
恐怖+怪奇 | 11 |
[あらすじ・感想]
昔、三河の浜の沖合に引き潮の時だけ姿を表す岩だらけの島がありました。
島の周りは潮の流れが早く、多くの船が座礁し多くの人の命が失われ船乗り達からは ”船の墓場、死者の海” と恐れられていました。
ある日、漁師の兄弟が村の石屋に頼まれて石塔を知多の村まで運ぶ事になりました。
岬を越えようとした頃、潮の流れが変わり船はどんどん沖へ流されていきました。しばらくすると船は “船の墓場、死者の海” にまで流されていました。
すると突然、縄が切れて漁師の兄弟は石塔もろとも海に投げ出されてしまいました。海原から兄弟が見上げると、島の岩の天辺にこの世の者とは思わぬ男達が手招きしていました。
恐ろしくなった兄弟達は必死に泳いで逃げました。
気がつくと日が暮れ、沈んだはずの船が浜まで打ち上げられていました。その後兄弟は熱が出て休んでいたが、しばらくして再び船を出しました。
この間の恐ろしい事件に懲りた兄弟は時間はかかっても遠回り航路をとる事にしました。
しかしいつの間にか潮の流れが変わり船は再び島の方まで流されていきました。
今度こそ助からないと思った兄弟は念仏を唱えながらしゃがみこんでいるとしばらくして ”船の墓場、死者の海” の前で船が止まりました。
弟がそーっと見上げてみると、そこには岩場の天辺に・・・。
島の周辺で死んだ者の亡骸が多くあったけど、それらの霊が供養できずにいたため、生きている人間に訴えていたということ。海にかかる霧と遠くの方で見える背の高い岩だけの島が不気味だった。仮に念仏を唱えていないとすれば霊によって漁師達は命を奪われていたのだろうか?
加茂湖の主
放送時期:1989年11月18日
話の舞台:新潟
作 画:亜細亜堂
声 優:常田富士男
カテゴリー | 幽霊 |
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関連ワード | 湖、女、長者、奉行所、呪い |
恐怖レベル | ★★★★★★☆☆☆☆ |
怪奇レベル | ★★★★★☆☆☆☆☆ |
恐怖+怪奇 | 11 |
[あらすじ・感想]
昔、佐渡の加茂村に武右衛門という長者が住んでいました。
武右衛門は大変強欲で加茂湖を1日でも早く埋めて佐渡で一番の長者になりたいと思っていました。地元の漁師達は加茂湖を埋める事に反対しましたが、武右衛門は土地の者から買った事を理由に聞く耳を持ちませんでした。
埋め立て工事は漁師達の声を無視して進んでいき、湖の形がすっかり変わってしまいました。
ある日、武右衛門が村内を歩いていると男が工事を中止するよう頼んできました。男は漁師で加茂湖を埋めてしまうと生活ができなくなると訴えましたが、武右衛門は聞き入れようとしませんでした。
怒った男は道端の大きな石で武右衛門に殴りかかりましたが、返り討ちに遭い傷だらけになりました。その後、奉行所で男は処罰され村から追い出されてしまいました。
裏では武右衛門から奉行にお金が流れていたのです。いざとなればお奉行様がなんとかしてくれると思い、武右衛門はやりたい放題でした。
その日の夜、奉行所を出た武右衛門は秋津村の坂を下り川の近くに来た時のこと。若い女が木の下で立っていました。釜屋村に帰る途中という女に武右衛門は “一人歩きは危険だから” と下心を出して送って行こうとしました。
お伴の長兵衛が女の身のこなしや言葉遣いに異変を感じたため止めようとしましたが武右衛門は聞く耳持たず。その後、武右衛門は長兵衛に先に帰る様に伝え、女を連れて釜屋村の方へ去って行きました。
しばらくすると長兵衛の前に青白くなった奉行が現れ、突然踊り始めたと思いきやその場で倒れると、“あの娘は性悪者” そう言い残し死んでしまいました。
長兵衛が慌てて女がいた方向へ戻ると、武右衛門が血を吸われ青白くなっていました。血を吸っている所を見られた女は武右衛門と共に消えていったと思いきや、後ろから武右衛門と女が現れ火の玉になって去って行きました。
加茂湖に行くと武右衛門と女が湖の上で踊っており、長兵衛は怖くなって加茂村に逃げ帰り村中は大騒ぎになりました。
その後、漁師達が船を出して武右衛門を探しましたが見つかる事はありませんでした。
やがて夜が明けようとした頃、湖の底から・・・。
裏で汚い事をしてまで野心を満たそうと湖を埋めて村人の怒りと湖の祟りを受けた話。
人間の欲望に対する怖さと怪奇が両立した作品だった。村を追い出された漁師が可哀想だったけど、二人の汚い大人がフラグを回収してくれている。ちなみにこの加茂湖というのは実際に存在し、新潟県の最大湖で日本百景に選ばれている。
袖切り化け物
放送時期:1989年09月02日
話の舞台:神奈川
作 画:若林忠生
声 優: 市原悦子
カテゴリー | 幽霊 |
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関連ワード | 山道、参拝、祟り、茶屋 |
恐怖レベル | ★★★★☆☆☆☆☆☆ |
怪奇レベル | ★★★★★★☆☆☆☆ |
恐怖+怪奇 | 10 |
[あらすじ・感想]
昔、富士山や神奈川の大山に登る参拝の者達が引きも切らずに歩いており途中で行き倒れる者もいました。
ある時の事、大山参りの百姓の捨吉と権兵衛が麓の茶店で休んでいました。茶店の主人いわく ”黄泉の赤坂を通ると袖を置いてけ”と声がするんだよ、“怖がって目を瞑って逃げると決まって石につまづいて大怪我をする”という、袖きりの化け物の話を二人に聞かせました。
その話を聞いて嘲笑う捨吉は怖がる権兵衛を置いて一人で大山道へ入って行きました。大山道の荒れ果てた階段を上っていると行き倒れた旅人の髑髏が転がっていたが捨吉は気に留める事はありませんでした。
すると道端に爺さんがうずくまり今にも死にそうな感じでしたが、捨吉は見ぬふりをして先に進んで行きました。
一方、後を追った権兵衛は髑髏を見つけるなり手近の草をむしって被せ手を合わせていました。
しばらく進むと、道端で息絶えた爺さんに出会いました。可哀想に思った権兵衛は手を合わせていると、”袖を置いてけ~”と声が。
権兵衛は怖がりながらも ”袖だけでは寒いだろうこれでも着ていけ” と着物を脱ぎ、死んだ爺さんの亡骸に被せ黄泉の赤坂を歩き始めました。
すると折り重なった木々が道を開け、綺麗な街道が現れ歩きやすくなっていきました。そして権兵衛は無事、峠下の茶屋に辿り着きました。
ところが先に行ったはずの捨吉が全身怪我だらけで茶屋の婆さんに手当てを受けていました。
心配しながらも一体何があったのか捨吉に聞いて見たところ・・・。
薄情な者と温情な者で結末が別れた話。最後の薄情な者が語った回想シーンが恐ろしい。
困っている人がいれば見捨てずに助けてあげましょうという作者のメッセージが伝わってくる。助かる者と助からない者、両者の普段の行いが人生を分ける話が日本昔ばなしには多いがその典型的な作品だと思った。
万吉や首はずせ
放送時期:1985年08月31日
話の舞台:宮城
作 画:若林常夫
声 優:市原悦子
カテゴリー | 幽霊 |
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関連ワード | お墓、祟り、家、柱 |
恐怖レベル | ★★★★★☆☆☆☆☆ |
怪奇レベル | ★★★★★☆☆☆☆☆ |
恐怖+怪奇 | 10 |
[あらすじ・感想]
昔、ある人里離れた古びたお堂の中に、桶屋の万吉という男が長い事住み着いていました。
親も身寄りも無い万吉は小さい頃から人一倍に家というものに憧れを持っており自分の家を持つのが長い間の念願でした。万吉は20年もの間、来る日も来る日も家を建てるために働き続けとうとうその日が訪れました。
大工と段取りをしている万吉でしたが、どうしても柱1本分のお金が足りませんでした。20年目のこの日になんとしてでも家を建て始めたかった万吉はその日の夜墓場に行きました。
そして墓場の中でも一番しっかりとした施餓鬼柱を引き抜き首の部分を斧で切り落とし、経文を綺麗に削り取りました。
翌日、万吉はお墓で引き抜いた柱を大工の元に持って行きました。こうして万吉の家はすぐに建て始められました。万吉が墓から持って来た施餓鬼柱は家の大事な所に建てられました。家が出来上がると万吉は喜び、早速移り住みました。
その日の夜、万吉が眠りに就こうとすると悪い夢を見ました。地面から白い手が伸びて来て ”万吉や首はずせ” という声が聞こえて一睡もできませんでした。
それ以来、万吉はみるみる痩せて仕事にも出られなくなりました。
ある日の夜、万吉が寝ている部屋から音がしたのでふと振り向くと障子戸が開いており、囲炉裏のある部屋の柱が立っているのが見えていました。
その後、万吉は近くの流行り神様に拝んでもらった所、”この家には死んだ人の恨みが柱から出ている” と言われたのです。思い当たりがあった万吉は大工に事情を話してお墓の柱をどこに使ったか聞きました。
柱を見ると削ったはずの経文が浮き上がり、柱は逆さまに立っていました。
すぐさま柱を取り外しお墓に戻しました。
すると柱を抜いた家が・・・。
安定の心霊系の怪談話。家を建てるため必死に頑張ってきた万吉だったが、何としてでもすぐに家を建てたいという気持ちから手段を選べなくなり、その努力をふいにしてしまったという戒めの様な話。自業自得とはいえ少々可哀想な感じもあるが、仏の怒りは一生付きまとうという事だろうか。墓の柱を使った時点でフラグが立っていたので先の展開が分かりやすい作品だった。
飯降山
放送時期:1994年08月27日
話の舞台:福井
作 画:柏木郷子
声 優:常田富士男
カテゴリー | 人間 |
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関連ワード | 山、尼さん、おにぎり、殺人 |
恐怖レベル | ★★★★★★☆☆☆☆ |
怪奇レベル | ★★★★☆☆☆☆☆☆ |
恐怖+怪奇 | 10 |
[あらすじ・感想]
昔、三人の尼さんが山に入って修行をしていました。
1番目は若い尼さん、2番目は年上の尼さんを慕っているおっとりした尼さん、3番目は最年長の笑顔の素敵な尼さんがいました。
尼さんは殺生が禁じられているため食べられるのは草や木の実だけでした。
山道を歩いていると若い尼さんが天から光が差し込んでいるのを見つけました。3人の尼さんが光が降りた所へ駆け寄って見ると木の株の上におにぎりが3つ置いてありました。修行のご褒美で天から食べ物が降って来たのだろうと思った尼さん達は感謝しながら手を合わせました。
それからも毎日天からおにぎりが降って来ました。
ある日、村人は今まではキノコが綺麗に切り取られていたのに最近は手付かずな事に異変を感じていました。山を歩いていると焦げ臭い匂いに気が付いた若い尼さんでしたが、ふと見ると鳥の骨と焚き火の後がありました。若い尼さんは “尼さんの誰かが鳥を捕まえて食べたんだ” と思いました。
3人の尼さんは死んだ鳥のためにお経を唱え始めました。すると山の中で女の人の叫び声が響き渡りました。
ある日、村人は若い尼さんが見かけなくなった事に異変を感じていました。2人の尼さんがいつもの木の株の所に行くとおにぎりが2つ置いていました。
その後、2人の尼さんはいなくなった若い尼さんのためにお経を唱え始めました。すると山の中で女の人の叫び声が響き渡りました。
最年長の尼さんが木の株の所に行くと、いつもあるはずのおにぎりが置いていませんでした。それを見た最年長の尼さんは愕然としました。
あれからいくつもの季節が過ぎたある日、村人が家の前で薪割りをしていると・・・。
殺生が禁じられているはずの尼さんの前で次々と仲間の尼さんが消えていった話。仏に祈り捧げる尼さんがなに食わぬ顔で人肉を食べているのでないか?という内容をさらりと語られていたのが怖い。最初に天から謎の ”おにぎり” を食べる事で尼さん達がおかしくなってしまったのか?、それとも空腹でおかしくなってしまったのか?色々と謎が多い作品だった。
それにしても最後の村人は無事だったのだろうか・・・。
幽霊街道
放送時期:1986年03月01日
話の舞台:岐阜
作 画:須田裕美子
声 優:市原悦子
カテゴリー | 妖怪 |
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関連ワード | 仏、夫婦、村人 |
恐怖レベル | ★★★★☆☆☆☆☆☆ |
怪奇レベル | ★★★★★☆☆☆☆☆ |
恐怖+怪奇 | 9 |
[あらすじ・感想]
昔、飛騨の平湯峠、国府村広瀬の在所まで伸びている ”ある山道” を村人は幽霊街道と呼んでいました。
幽霊街道には得体の知れない者が尾根の街道をゾッとする様な叫び声を上げて通るという噂がありました。
ある朝、村の若い衆は噂が本当か確かめるために藤十郎の家を訪れました。
藤十郎は若い衆を連れて尾根に向かって出かけました。
藤十郎は家を出る前に御仏供(おぶく)さんを食べていました。山に出かける前に御仏供を食べると無事に嫁の元に帰ってこれるという言い伝えがあったのです。
麓まで辿り着いたその日の夜、若い衆は尾根道に頭を揃えて眠りにつきました。生暖かい風が吹いていました。藤十郎は一番風の当たる場所で考え事をしていました。
突然辺りの様子が変わり、得体の知れない者が叫び声を上げながら藤十郎に迫って来ました。
「藤十郎は御仏供さんを食っとる、捕らえるのに骨が折れる」と言いながら近づいて来ました。
藤十郎は吹き飛ばされ、持っていた山刀の刃が溶けました。藤十郎の異変に何事かと思った若い衆でしたが、化け物は見ていませんでした。
その時、猟犬のシロが吠え始めました。すると上空から得体の知れない化け物が再び姿を現しました。
若い者は吹き飛ばされ、化け物は藤十郎を吸い込んだあと去っていきました。
若い衆は恐ろしくなって慌てて逃げ出し藤十郎の家まで一目散に走っていきました。藤十郎の嫁になんて言っていいか困惑する若い衆。
藤十郎が化け物に連れ去られた事を正直に話そうと決意した若い衆が家の戸を叩くと・・・。
パッと見の印象は「亡者道」の結末を良くした版の作品だと思った。山の怪道と幽霊、仏様のお供え物、登場人物や犬の作画など、似ている点が多い。出てくるのは幽霊というよりかは爬虫類を思わせる見た目をした化け物という感じがした。藤十郎が化け物に吸い込まれた後、どの様な経緯を辿ったのか謎が残る話でもあった。
座敷童子
放送時期:1987年05月09日
話の舞台:岩手
作 画:上口照人
声 優:市原悦子
カテゴリー | 幽霊 |
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関連ワード | 童、屋敷、深夜 |
恐怖レベル | ★★★★☆☆☆☆☆☆ |
怪奇レベル | ★★★★★☆☆☆☆☆ |
恐怖+怪奇 | 9 |
[あらすじ・感想]
昔、陸奥の岩手の事、春の山道を一人の六部が旅を続けていました。
日も暮れたところ、途中行手に大きな屋敷があったので旅の六部が一夜の宿を願い出ることにしました。それは何代も続く長者屋敷で、家の内外には活気が溢れ当主である孫左衛門も物腰が柔らかく旅の六部に対しても丁寧に応対していました。
六部はこんな大きな屋敷に宿を取った事がなかったため中々寝付けませんでした。
夜も更けてきた所でした。屋敷のあちこちから不思議な物音が聞こえ始めました。六部は寝床を抜け出し廊下に出てみました。屋敷を走り回る音は響き渡っては遠ざかって行きました。
「この音は物取りや狐狸、妖怪のたぐいではあるまい、この不思議な音は一体なんなのじゃ」
すると外で縄跳びをする童の姿が見えました。
六部は近くで見ようとしたところ、物音を立ててしまいそれに気づいた童はどこかへ消えてしまいました。
それっきり屋敷からは物音が聞かれなくなり、六部も眠りに落ちていったのでした。
しばらくすると、寝ている六部の周りで手毬唄が聞こえ手毬をつく童の姿がありました。それを見た六部は旅の疲れが癒されていく感じがしました。
「ほれほれ、そんなに走るとあぶないぞ」
「こ、これ怒っているのではないぞ」
しばらく固まっていた童でしたが、その後足早に外へ出て行きました。翌朝、六部はもてなしてくれた当主に厚く礼を言うと屋敷を後にしました。
その後、何年かの月日が流れ、六部は再び孫左衛門の屋敷を訪れました。
すると屋敷から出てきた女の子達、聞いてみると隣村の屋敷に行くという。
見送った六部は孫左衛門の屋敷に立ち寄ってみると・・・。
深夜に広い屋敷で物音がするという演出がじわじわと怖さが伝わってくる。暗い部屋の中で息を飲むように見入ってしまう怖さがある一方で、童の無邪気さも感じられる作品。座敷童は心優しい家の主や人間の周りにしか姿を見せないらしい。デフォルメされ過ぎない作画も良い意味で緊張感を出しているなと思った。
耳なし芳一
放送時期:1976年07月10日
話の舞台:山口
作 画:馬郡美保子
声 優:市原悦子
カテゴリー | 幽霊 |
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関連ワード | 平家、武者、亡霊、墓、寺 |
恐怖レベル | ★★★☆☆☆☆☆☆☆ |
怪奇レベル | ★★★★★★☆☆☆☆ |
恐怖+怪奇 | 9 |
[あらすじ・感想]
昔、下関が赤間関と呼ばれていた頃、阿弥陀寺というお寺がありました。
お寺には目が見えないびわ法師の芳一という琵琶弾きがいました。その芸は師匠を凌ぐほどになっており、とりわけ平家の最後の戦いである壇ノ浦の合戦の弾き語りは真に迫るものがありました。
ある日、芳一がお寺で一人琵琶の稽古をしていた時、武者が訪れました。
「わしはこの寺の近くに足を止めておられる身分の高いお方の使いの者じゃ」
芳一は身分の高いお方が自分の弾き語りを聞きたいと言う事を知って興奮、武者の後をついて行きました。この辺りにはお寺の門より大きい門はない様に思っていたので、どこのお屋敷だろうと思いつつ、やがて大きな館の中に通され壇ノ浦の戦いを吟じたのでした。
しばらくすると女の声が聞こえて ”今宵より3日間毎夜そなたの琵琶を聞きたい”、”寺に戻ってもこの事は誰にも話してはならぬ” と告げられました。
朝、不審に思った和尚の問いただしに対し芳一は一言も話しませんでした。和尚は一言も話さないのは何か訳があるに違いないと思いその日の夜、芳一の後を寺男に付けさせました。
するとお墓の前でずぶ濡れになりながら琵琶を引いている芳一の姿がありました。寺男達は力任せに芳一を連れ戻しました。
この話を聞いた和尚は芳一が亡霊に惑わされている事を知り、魔除けのまじないをする事にしました。
そしてその日の夜も亡霊武者がお寺にやってきましたが芳一の姿が見当たりません。
芳一の体は経文によって亡霊からは見えなくなっていたのです。
しかし耳には経文は書かれていなかったため亡霊には芳一の耳だけは見えていました。芳一を呼びに行った証だけでも欲しい亡霊武者は耳だけを切り落とし去って行きました。
夜明け前、和尚が急いで芳一の様子見に行くと・・・。
芳一の壇ノ浦の弾き語りを聞きいて悲しむ亡霊達の姿が印象的。琵琶を引いていた場所は戦いで散って行った平家のお墓ではないだろうか?安徳天皇は壇ノ浦の戦いで平家が敗れた後、近くの急流で亡くなったと言われている。ちなみに阿弥陀寺(現在は赤間神宮)には安徳天皇が祀られているという。
吉作落とし
放送時期:1988年10月29日
話の舞台:大分
作 画:重国勇二
声 優:市原悦子
カテゴリー | 人間 |
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関連ワード | 男、岩茸、岩壁、絶望 |
恐怖レベル | ★★★★★★★☆☆☆ |
怪奇レベル | ★☆☆☆☆☆☆☆☆☆ |
恐怖+怪奇 | 8 |
[あらすじ・感想]
昔、ある山に岩茸を採って暮らしている吉作というたくましい若者がいました。
幼い頃、木こりの父が亡くなり母の手一つで育てられましたが、その母もやがてこの世を去りました。
岩茸を採るのは大変難しく、命綱を頼りに絶壁にへばりついて岩肌から掻き取らなければいけませんでした。
ある秋の日、吉作は傾山の岩壁を少しづつ降り岩茸を採取していました。
ふとを見ると足のすぐ下に小さな岩の棚がありました。
吉作は綱の端の結び瘤を握りいっぱいに背を伸ばして岩の棚に降りました。吉作は苦しい姿勢から解放され、ここで休む事にしました。
十分に休憩した吉作は仕事に戻ろうと上を見たところ、綱がありませんでした。
あるにはあるが、吉作の体重で伸びきっていた綱は吉作が手を離したため手の届かない上の方まで上がっていました。
持っているのは岩茸を採るための竹で出来た道具しかなく、吉作はなす術がありませんでした。
吉作は助けを呼ぼうと何度も叫びましたが、その声も遥か下の原生林に吸い込まれていきました。
秋の日暮れは早く、夜は厳しい寒さに襲われました。
次の日も、その次の日も吉作は助けを求め叫び続けました。
遥か下の村人には吉作の声は山の谷間にこだまして化け物の叫び声の様に聞こえていました。噂が噂を呼んでついに峠道を通る人さえいなくなっていきました。
吉作の声は次第に小さくなっていき飢えと寒さで意識が朦朧としていました。
岩の棚から落ちた石がゆっくり木の葉が落ちていく様に見えた吉作は思いました。
「ここから飛んだら俺もふんわり静かに谷間へ降りられるかもしれん」
秋のある日の夕暮れ、谷間の岩は紅葉よりも赤く染まっていたのでした・・・。
幽霊でも妖怪でも他人でもない別の意味でのリアルな怖さがある話だった。いつもと同じ様に仕事に行って帰るはずが、一つミスで全てが終わってしまうという絶望と恐怖が描かれている。誰も助けに来ないというのもドラマや漫画にある様な都合の良い展開ではなく現実はこんなものなのかも知れないと思った。
とうせん坊
放送時期:1978年12月09日
話の舞台:岩手
作 画:須田裕美子
声 優:市原悦子
カテゴリー | 人間 |
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関連ワード | 男、村人、観音様、いじめ |
恐怖レベル | ★★★★★☆☆☆☆☆ |
怪奇レベル | ★★☆☆☆☆☆☆☆☆ |
恐怖+怪奇 | 7 |
[あらすじ・感想]
昔、雪深い陸奥、北上川の上流の小さな寺に両親を知らない男 “とうせん坊” は預けられました。
だがこの寺に預けられた子供達の生やす声だけが耳に残り、お経を一行も覚える事もままならず男は背を丸めてべそを書くだけでした。
そして、とうせん坊はとうとう寺から追い出されてしまったのでした。
とうせん坊は観音堂にお参りをして100日間のお籠りをしました。
「どうかオラに十人力、いや百人力の力をくだせえ、世間のやつらをあっと言わせてやりてえ」
その夜、とうせん坊は夢を見ました。
観音様が鞠をついていました。そしてついていた鞠がとうせん坊の懐に飛び込んでいき、腹が減っていたとうせん坊はその鞠を食べてしまいまいました。
朝になって目覚めると体の中からみるみる力が湧いてきました。
秋になると神社の境内で相撲が行われとうせん坊も自分の力が試したくてうずうずしていました。殺すつもりはありませんでしたが、とうせん坊の前に何人もの男達が血を吐いて死んでしまいました。
人殺しとして村を追い出されたとうせん坊はそれから山に篭もりました。
ところが、とうせん坊の寝ぐらを知った村の若い衆が鍋の中に糞を入れたのです。この頃からとうせん坊は村や町を駆け巡り人や動物をなぶり殺し家に火を放ち、人が集まる祭り行事に現れては人々を皆殺しにして去って行きました。
そしてとうせん坊は自分の生まれた村から姿を消して行きました。
それから数年後、とうせん坊は越前の三国に住みついていました。ここには東尋坊があり、とうせん坊はここの景色を気に入っていました。
春のある日、東尋坊にふらりと現れたとうせん坊。
そこでは宴をする男達がとうせん坊を招き入れてくれ親切に酒まで注いでくれたのです。
久しぶりの酒に気分良くしたとうせん坊、空を見上げると子守唄が聞こえ灰色の心に微かな温もりが蘇ってきました。
「とうせん坊!!」
目を覚ますととうせん坊の全身は縄で縛られていました。
そして身動きが出来なくなったとうせん坊は男達に抱えられ・・・。
心霊、妖怪、鬼の類ではなく人間の本質的な恐ろしさが感じられた話。村社会の人間の怖さと、観音様から力を授かったものの人間不振に陥り力の使い方を誤った人間の怖さ。人間の怖さとそれが生み出す悲しい結末を描いた作品。
三本枝のかみそり狐
放送時期:1991年08月31日
話の舞台:福島
作 画:小原秀一
声 優:市原悦子
カテゴリー | 動物 |
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関連ワード | 狐、婆さん、赤子、竹藪、寺 |
恐怖レベル | ★★★☆☆☆☆☆☆☆ |
怪奇レベル | ★★★★☆☆☆☆☆☆ |
恐怖+怪奇 | 7 |
[あらすじ・感想]
昔、ある村の村はずれにある三本枝という竹林には人を化かす狐が出るといわれ村人に恐れられていました。
彦兵衛という村の若者は “夜、三本枝に近づくと酷い目に遭わされる” という村人の噂を全く信じていませんでした。
「狐には化かされねえ、見つけたら狐汁にしてやる」そう言って彦兵衛は次の日の夜、一人で三本枝の中まで入って行きました。
竹藪の中には赤ん坊を抱いた娘がおりました。これを狐だと思った彦兵衛は跡を付けて行くと、やがて娘は一軒のあばら家へ入っていきました。
彦兵衛は狐に化けた娘が家の主を騙そうとしていると勘違いしていました。
家の戸を開けると赤ん坊を抱いた婆さんと娘がいろりの前に座っていました。
「そいつは三本枝の狐だというのが分からないのか? それじゃ俺がその赤ん坊を赤カブに変えてやる」
彦兵衛はそう言って赤ん坊を婆さんから奪っていろりの中に投げ入れました。ところが赤ん坊はいろりの中で死んでしまいました。
「人の孫を殺すとは許せない。あの男の命を取ってくれる」そう言って婆さんは恐ろしい形相に変わり果ててしまいました。
人の子を殺したと恐ろしくなった彦兵衛はあばら家を飛び出し逃げていきました。変貌した婆さんも柳刃包丁を持って男の跡を追って行きました。
寺の中に逃げ込んだ彦兵衛の目の前に一人の和尚さんが現れました。
「お助け下さい、私は狐と間違えて一人の赤子を殺してしまいました。今、その婆さまに追われています。」
“婆さまをなだめてやる” と言って和尚は彦兵衛を寺の中へ招き入れました。
「この寺に男が逃げ込んだじゃろ。そいつはワシの孫を殺した。どこにおるか教えてくれ。」
彦兵衛を追って寺まで来た婆さまでしたが和尚になだめられてやっとの事で去って行きました。
和尚に感謝しきりの彦兵衛でしたが、「お前は人を一人殺しておる、ここは何としてでも坊主になるしかない」そう言って和尚はカミソリを取り出し彦兵衛の髪を剃りました。しかし、それは凄まじく痛かったのでした。
「お前は人を一人殺しておる、これぐらいの我慢ができなくてどうする。」と和尚。
その日の夜、彦兵衛は寺で一睡しました。
それからどれくらい経ったか、彦兵衛がふと目を覚ますと、何とそこは薄暗い藪の中で・・・。
先走って勘違いして酷い事をしたけど、それらも全て勘違いだったという話。竹藪入った時点で狐に狙われている描写もあり、結局は噂をバカにしてた彦兵衛だけが酷い目に遭ってしまった。強がりや大きな事を言うと自分に返ってくるという戒めのような作品。それにしてもこの作品は作画が独特でじわじわくる怖さがあった。
猫岳の猫
放送時期:1977年11月26日
話の舞台:熊本
作 画:昆進之介
声 優:市原悦子
カテゴリー | 妖怪 |
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関連ワード | 猫、山、屋敷、旅人、お面 |
恐怖レベル | ★★★☆☆☆☆☆☆☆ |
怪奇レベル | ★★★☆☆☆☆☆☆☆ |
恐怖+怪奇 | 6 |
[あらすじ・感想]
昔、阿蘇山の麓の草むらの中を一人の旅人が歩いていました。
旅人は途中、道に迷って猫岳に迷い込んでしまいました。
九州には猫岳という恐ろしい山があり、歳を取った猫がここに集まると言われていました。旅人はこんな恐ろしい山から逃げ出せねばと焦りました。
しばらくするとこんな山の中には珍しいくらいの立派な屋敷が建っていました。すると女将が出て来て旅人を薄気味悪い奥座敷へ案内しました。
この屋敷では晩ご飯が出てこなかったので旅人は声をかけてみたところ女将は先に風呂へ案内してくれました。旅人は長い長い廊下を渡って風呂場へ向かって行きました。
すると途中、老婆とすれ違いました。
老婆はひどく驚いていましたが、旅人は何知らぬげに風呂に入ろうとしました。その時でした。
「その風呂に入ってはいけません」
老婆は5年前に旅人に可愛がられていた隣の家の三毛猫でしたが、あれから猫岳の頭領の元でお使いをしていたのです。
もしここで湯に入ったり、飯を食ったりすると毛が生えて猫になってしまうという老婆。それを聞いた旅人は急いで屋敷から逃げ出しました。
すると屋敷にいる化け猫の女達が逃げた旅人の後を追っていき・・・。
旅人が迷い込んだ恐怖の化け猫屋敷だったが、奇跡的に昔に可愛がっていた猫に救われた話。普段から誠実な対応をしていると誰かが手を差し伸べてくれる事もあるというメッセージを作品から伝わった。それにしても主役である旅人の見た目が ”ごはんですよ” のCMに出て来るメガネの男に似ていると思った。
さかな売りときつね
放送時期:1979年08月04日
話の舞台:東京
作 画:古沢日出夫
声 優:市原悦子
カテゴリー | 動物 |
---|---|
関連ワード | 狐、祟り、雷雲、若者 |
恐怖レベル | ★★☆☆☆☆☆☆☆☆ |
怪奇レベル | ★★★☆☆☆☆☆☆☆ |
恐怖+怪奇 | 5 |
[あらすじ・感想]
昔、江戸の東、小松川の篠崎村あたりに一匹の大狐がいました。
またこの近くには魚を売って暮らしている二人の若者がいました。気の強い方の魚売りは狐に魚を騙し取られている事にいつも腹を立てていました。
そんなある日、草むらで昼寝をしている狐を発見した魚売り達。「祟りがある」という相方の忠告を無視して気の強い方の魚売りは狐の尻尾を踏みつけました。
狐は尻尾を踏んだ魚売りを恨めしそうに見つめた後、去っていきました。
すると突然激しい雷雨に見舞われました。
一足先に帰って行った相方とは対照的に魚売りは歩き続けました。魚売りは雨宿りをさせてもらおうと知り合いの家に立ち寄り戸を叩こうとした所でした。突然家から男が出てきて「今しがた女房に死なれたから埋めてくる、お前さん一人で休んで行ってくれ」と言い残し去っていきました。
不思議に思った魚売りでしたが、家の中に入りくつろいでいました。
すると突然家の奥から女の姿をした幽霊が出てきました。そして女の幽霊は魚売りの腕に噛み付つきました。
逃げ出す魚売りを冷たい手で引き戻す幽霊。
丁度その時、畑仕事をしていた村人が、一人で暴れている魚売りを発見。村人に水をかけられた魚売りは正気を取り戻ししました。
今までの出来事は狐の祟りで見た幻覚だったのです。
その後、狐がいた場所にお供え物をしたところ、祟りはなくなりました。
しかし男には不可解に思った事がありました。腕には”あの時の傷”が・・・。
魚売りとしては魚を奪う動物を懲らしめたいだけだったのだが、相方の忠告を無視して暴走した感あり。狐のターゲットになると色々と厄介だなという話だった。お稲荷さんの祟りは恐ろしい。幻覚といっても腕に傷があるという事は、あの時の狐の仕業だったのだろうか?
不可解な事件である。
まんが日本昔ばなしの超怖い怪談話の感想
まんが日本昔ばなしの怖い話をまとめてみると割合的に “幽霊” にまつわる話が多くなった。
心霊系の話は死者の怨霊が人間に執着するものが多く、場合によっては登場人物が逃げたとしても後に命を絶たれるケースも多いため怖さが際立った感じがした。
幽霊の場合、鬼や妖怪に比べると物理的に逃げられないケースが比較的多いのではないだろうか?「十六谷人谷」「佐吉船」などは幽霊の執着的な怖さを描いた典型的な話である。
“妖怪”、”鬼”の話も怖い話がある。心霊系の話よりもゾクッとする話は少ないが、妖怪であれば「古寺の化けもの」、鬼であれば「牛鬼淵」は怖い話である。いずれの話も化け物から逃げるのが困難で人が命を落としている。
一方で「まんが日本昔ばなし」は”人間”的な怖さにフォーカスした作品も多くあった。人間の持つ欲求や過ちが悲劇を生み出した話も多い。「飯降山」「とうせん坊」は人間の本能的な怖さ、「吉作落とし」は一つの過ちが自らの人生を終わらせてしまった恐ろしい話であった。
”動物” に関わる怖い話もある。狐が人間を化かす「さかな売りときつね」「三本枝のかみそり狐」は動物を甘く見た人間が酷い目に合わされるという日本むかし話の典型的なストーリーである。
“天災” を題材にした作品もあり「みちびき地蔵」は今になって見てみると東北の大地震、津波をまるで予言したかの様な怖さがあった。