ジオン公国軍の最後の砦である宇宙要塞ア・バオア・クーについて紹介したいと思います。
ア・バオア・クーといえば一年戦争においてソロモンと共にジオン軍の最終防衛ラインとして地球連邦軍と激しい戦いが繰り広げられた場所ですが、ライバル同士であるアムロとシャアの一騎討ちが行われた場所としても有名かと思います。
今回はア・バオア・クーの誕生や最終決戦の流れ、戦後の運用と崩壊までの経緯を辿っていきたいと思います。
宇宙要塞ア・バオア・クーについて
宇宙要塞ア・バオア・クーの運用状況や最終決戦の記録などをまとめてみました。
ア・バオア・クーの名前の由来
ア・バオア・クーの名前の由来はインドにあるジャイナ教の15世紀の建造物「勝利の塔」に巣食うとされる幼獣「ア・バオ・ア・クゥー」から来たもの。
幼獣は透明で誰にも姿を見せないが、巡礼者が階段を登る度に透明だった身体が青みがかった光を放ち着色されていく。
巡礼者が塔の頂上に辿り着くと幼獣は影を捉える事ができなくなり、塔の最上階まで辿り着くことなく輝きは失うとされている。
ジオン公国軍の勝利を信じて付けた名前であるとされるが、「ミライ・ヤシマ」はア・バオア・クーの事を妖怪と表現している。
形的にはア・バオア・クーはジオンのマークに似ている感じがする。
ア・バオア・クーの誕生と運用
劇中では「機動戦士ガンダム」「機動戦士Zガンダム」で登場、宇宙要塞もしくはMS開発拠点として運用されていた。
元々はソロモンやルナツーといった小惑星と同じく資源採掘用として「アステロイド・ベルト」から運ばれ、ラグランジュポイントのL2宙域に配置されていたが、一年戦争前にジオン公国によりもう一つの小惑星と結合した事で宇宙要塞として運用される。
一年戦争中は「ソロモン」「グラナダ」と共にジオン公国軍の防衛ラインを構築、要塞の各エリアにはモビルスーツやドロス級大型空母を配備する事で防衛力を強化した。
戦争終盤の宇宙世紀0079年12月24日には地球連邦軍との戦いでソロモンが脱落、これにより事実上の最後の最終防衛ラインとして決戦場になった。
一年戦争後はジオン共和国の資源採掘として、その後ティターンズによって接収「ゼダンの門」に名前を変え、MS・MAの開発拠点として運用されている。
ア・バオア・クーの位置
ア・バオア・クーは月の軌道上の外側に存在する「L2宙域」に配備されている。
連邦軍のV作戦の舞台となり、当初アムロ・レイが暮らしていた「サイド7」を除いて周囲にはスペースコロニー群が多数配置されている。
ジオン軍の本拠地がある「サイド3」とも隣り合っており、付近には「宇宙要塞ソロモン」がある事から見てもジオン軍にとって重要な拠点であることが分かる。
ア・バオア・クー攻略戦
地球連邦軍はジオン公国本土の侵攻を目的とした「星一号作戦」を決行。
ソロモン脱落後、デギン公王は独自の和平交渉に向けて動き出し、レビルとの会談の席が持たれようとしていたがギレンがそれを察知。
12月29日にジオン軍の「ソーラ・レイ」による砲撃によって連邦軍の艦隊は壊滅、この際に和平交渉中だった連邦軍のレビル将軍とジオン軍のデギン・ザビが攻撃に巻き込まれ死亡。
この攻撃により連邦軍は戦力の3割を消失し、決戦用兵器「ソーラーシステム」も失う事になる。
後に「ギレン・ザビ」による直接指揮に入ったジオン軍は優位になるものの、連邦軍の抵抗と妹の「キシリア・ザビ」によるギレンの暗殺により戦況が一転。
また、戦況が不利になった事で逃亡を図ろうとしたキシリアを「シャア・アズナブル」が暗殺した事でザビ家は全滅、一年戦争は連邦軍が勝利に終わる。
ア・バオア・クーの防衛力
ア・バオア・クーでは周囲を東西南北の4つの防空管制エリアに区分している。
太陽の方向を南側とし、N(北)、E(東)、W(西)、S(南)に分かれそれぞれの兵力が展開されている。
ジオン軍の「ソーラ・レイ」による攻撃で大多数の戦力を失った連邦軍だったが、戦力的には連邦側が依然として有利とされていた。
「連邦軍の主な兵器」
RX-79 ジム
RB-79
戦艦・巡洋艦など
「ジオン公国軍の主な兵器」
MS-06F ザクII
MS-09R リックドム
MS-14 ゲルググ
MA-05 ビグロ
大型空母・戦艦・巡洋艦など
「各エリアの戦力と行方」
・Nフィールド
ジオン公国の本拠地「サイド3」を含むエリアで戦闘において主戦場となった。主力空母に「ドロス」が配備されている。
戦力の損耗が少ない連邦軍の第2大隊・第3大隊がこのエリアに向かい、多数のジムやボール、艦艇などが投入されジオン軍と激しい攻防が繰り広げられた。
・Sフィールド
地球側のエリアで戦艦ルザルを中心とした連邦軍の第1大隊にはホワイトベースも配備。
また「アムロ・レイ」のガンダムはジオングに搭乗した「シャア・アズナブル」と戦いを繰り広げている。また、「アナベル・ガトー」や「エギーユ・デラーズ」大佐の親衛隊もこのエリアに配属されている。
空母「ドロワ」も配備されていたが最後は撃沈された。
・Eフィールド
終戦後に要塞からジオン軍が脱出するルートにもなり、追撃した連邦軍との戦いが繰り広げられた。
試験運用艦「ヨーツンヘイム」、モビルアーマーの「ビグ・ラング」を保有するカスペン戦闘大隊もこのエリアに配備されている。また駆逐モビルポッドの「オッゴ」も評価試験の名目で配備された。
・Wフィールド
他のエリアに比べると戦力は僅かな艦艇のみの配備となった。
両軍の戦況 | |
宇宙世紀0079年12月31日 | |
0時過ぎ | 連邦軍の第2・第3大隊はNフィールドへ、第1大隊はSフィールドへ向かう。 |
1時17分 | ア・バオア・クー要塞内でギレンによる演説が行われ、学徒動員兵が実戦投入される。 |
5時00分 | 連邦軍は戦闘態勢に移行する。 |
8時10分 | Nフィールドで戦闘開始。 |
8時40分 | Nフィールドでは両軍ともに艦隊戦、モビルスーツ戦が一層激しくなる。一方でSフィールドではガンダムとジオングとの戦闘が始まっており、Eフィールドではカスペン戦闘大隊が連邦軍の侵攻を食い止めていた。 |
9時25分 | ギレンがキシリアに射殺された事で指揮権はキシリアに受け継がれた。 |
9時40分 | ジオン軍の指揮系統の乱れもありドロス撃沈。Sフィールドでもジオン軍の戦力低下。 |
10時10分 | Sフィールドでジオン軍の空母ドロワが撃沈される。デラーズ大佐の親衛隊は要塞から離脱。 |
11時00分 | Sフィールドの連邦軍のモビルスーツ部隊がア・バオア・クー要塞内に侵入。この時にはジオングも撃墜されている。 |
12時05分 | シャアがキシリアを射殺した事で戦いを指揮するザビ家は全滅。 |
12時15分 | ジオン軍は要塞・指揮系統共に機能停止。Eフィールドではカスペン戦闘大隊と連邦軍との交戦が続く。 |
18時00分 | ジオン公国側が地球連邦政府との終戦協定の締結を提案。 |
宇宙世紀0080年1月1日 | |
15時過ぎ | 停戦が成立。一年戦争が終結する。 |
決戦を前に演説を行うギレン。ソーラ・レイで多大な被害を受けた連邦軍の戦力を「敢えて言おう、カスであると!」と言い切り、兵士達の士気を高めた。
デギン公王の死を巡りギレンを射殺するキシリア
専用ドムで出撃しようとするガトーだったが、デラーズが静止しようとする
ア・バオア・クーから脱出したデラーズ大佐率いる親衛隊。この時の親衛隊の戦力はグワジン級2隻、チベ級1隻、ザンジバル級1隻だった。
ガンダムとジオングが相討ちになるシーン。
シャアに射殺されるキシリア、これにより指揮系統に関わるザビ家は全滅。
辛うじてア・バオア・クーから脱出し、皆んなの元へ帰還を果たすアムロ・レイ。
ゼダンの門
一年戦争終結後はジオン共和国により「資源採掘用」として運用されている。
宇宙世紀0087年に勃発したグリプス戦争ではティターンズが接収。同年6月8日にL3宙域に移設、モビルスーツの開発の拠点として扱われ「ルナツー」「グリプスII」と共に「ゼダンの門」と呼ばれる事になった。
ゼダンの門ではモビルアーマー「ラクシャサ」「ハティ」、可変モビルスーツ「ハンブラビ」「ガンダム・スコル」などが製造されている。
その後、ティターンズはアクシズとの交渉が決裂、宇宙世紀0088年1月18日にはエゥーゴとアクシズの共同作戦によって「小惑星アクシズ」を衝突された事によりゼダンの門は崩壊する。
アーガマは「カミーユ・ビダン」が特使としてアクシズの旗艦「グワダン」に派遣。
メラニー会長からの親書を一読したアクシズの摂政「ハマーン・カーン」は交渉はアーガマで行うと宣言、カミーユと共にアーガマへ向かう。
共闘の条件としてエゥーゴはザビ家の復興とサイド3の譲渡を確約。またこの際にクワトロ・バジーナ大尉が頭を下げる事でハマーンは申し出を受け入れた。
グワダンは誤射を装いグリプス2の核パルスエンジン1基を破壊する。エンジンが全て破壊されなかったのは、後にアクシズがグリプス2を制圧して運用するためである。
ハマーンはティターンズ総帥である「ジャミトフ・ハイマン」に会談を申し込むものの、ティターンズとの交渉が破談した事により、ハマーンはゼダンの門にアクシズをぶつける事を宣言する。
この際、ハマーンはジャミトフの暗殺を試みるが、失敗に終わっている。
第45話「天から来るもの」。エゥーゴとアクシズの共同作戦が実施、エゥーゴの艦隊・MS部隊はゼダンの門の港湾を封鎖する。その後、小惑星アクシズはゼダンの門と衝突。
衝突の衝撃で二つに分離したゼダンの門。
ゼダンの門の破壊に伴い、ティターンズは要塞内で保有していたモビルスーツを失ってしまう。
宇宙要塞ア・バオア・クーの感想
宇宙要塞ア・バオア・クーについて紹介しました。
機動戦士ガンダムでは最後の砦として決戦の舞台になったア・バオア・クーですが、連邦軍とジオン軍の物量戦が繰り広げられた場所というのが劇中の印象です。
ジムとボールを主体にする連邦軍に比べて、リックドムやゲルググを保有するジオン軍の方が、モビルスーツとしてのスペックが高いのですが、最終決戦は連邦軍が数で押し切った感じがあります。
物量戦が繰り広げられたのがNフィールドですが、見どころ万歳のエリアといえば、有名なガンダムとジオングの戦い、そしてガトーやデラーズ艦隊も配備されていたSフィールドかと思います。
一年戦争は結果的に連邦軍が勝利を納める事になりましたが、もしガルマもギレンもキシリアもデギンも殺害されていなければどの様な結果になったのか興味深いですね。
ザビ家へ復讐しようとしたシャアにとっては目的を達成出来た訳ですが、ジオン軍は身内争いのゴタゴタで自滅した感じも歪めないですね。
「機動戦士Zガンダム」のアクシズとの衝突で崩壊するシーンは旧ジオンの象徴でもあるゼダンの門と、ネオ・ジオンの象徴でもあるアクシズとの対比を垣間見た感じがします。